森の芸術祭 晴れの国・岡山|津山エリア(パート3)の作品を紹介

加藤萌「微睡みを」 甲田千春「枯鳥」 アイキャッチ画像 アート

先日、岡山県で開催されている「森の芸術祭 晴れの国・岡山に行ってきました!
(「森の芸術祭」の概要については最後にまとめております)

この記事では全ての会場のうち津山エリアについてご紹介してまいります。
津山エリアは作品数が多いため、パート1、パート2、パート3に分けて記事を作成しております。
こちらのパート3では衆楽園・津山城(鶴山公園)と城下スクエア・つやま自然のふしぎ館の作品を掲載します!

津山自然のふしぎ館 キンシコウ トップ画像
津山自然のふしぎ館 キンシコウ。のっけから めちゃ怖い。

衆楽園(旧津山藩別邸庭園)

国の名勝に指定されている、津山藩2代藩主・森長継が京都から作庭師を招き、京都御苑内にある仙洞御所(せんとうごしょ)を模して造営された池泉廻遊式庭園。春の桜、夏の睡蓮、秋の紅葉、冬の雪景色など、四季折々の景観美を堪能できる。無料で開放されている。

営業時間:4月~10月:7:00~20:00、11月~3月:7:00~17:00
芸術祭の期間中9:00~17:00(作品設置エリアへの最終入場16:30)
定休日:なし(芸術祭の期間中は月曜日)

衆楽園(旧津山藩別邸庭園)入口
衆楽園(旧津山藩別邸庭園)入口。無料で開放されています。
営業時間は時期によって異なるので注意!あと芸術祭りの期間中だけ月曜休みです。

衆楽園の架け橋
衆楽園の中島への架け橋

衆楽園の約1000株の睡蓮
衆楽園の約1000株の睡蓮

リクテット・ティラヴァニ【無題2024(水を求めて森を探す)】T7-e

リクリット・ティラヴァニ Rirkrit Tiravanija

1961年、ブエノスアイレス(アルゼンチン)生まれのタイ人アーティスト。
旧来の展覧会形式を否定し、料理や食事、読書といった日常的な行為の共有を通した社会的交流を提示する活動で知られている。その作品は、芸術品の優位性を拒絶する環境を創出し、モノの利用価値や、単純な行為と共同体内の相互扶助を通じて人々を互いに結びつけることに焦点を当てるとともに、労働や技巧にまつわる既成概念の打破を試みる。

今回彼の作品「Untitled 2024(to find water look for forests)」の一つの要素として風月軒に展示されるのは、真庭市勝山で「ひのき草木染工房」を営む加納容子氏の工房の玄関に掛けられてきた7枚の暖簾である。加納の手により、ひのきの木の皮で月の柄に染められたこれらの暖簾は、日焼けが麻布に経年変化をもたらし、独特の風合いを生み出している。ティラヴァニは、茶室空間に7枚の暖簾を層状にかけて展示。視覚的な奥行きが生まれ、開口部からの風にゆらぐ暖簾が空間に動きを与える。

芸術祭公式ページおよび会場内パネルより抜粋、一部改変

けんぞう

ティラヴァニ氏の表記/発音ですが、「ティーラワニット」「ティラワニ」「ティーラワニ」など色々とあるようです!あと迎賓館にタペストリーがずらりと展示されている作品の写真を見たのですが、私が行ったときはそこはテーブルが並んでいて食事処になってた気がします!

リクテット・ティラヴァニ【無題2024(水を求めて森を探す)】T7-e-1

リクテット・ティラヴァニ【無題2024(水を求めて森を探す)】T7-e-2
リクテット・ティラヴァニ【無題2024(水を求めて森を探す)】T7-e

太田三郎【鶴亀算】ほか T7-d

太田三郎 Saburo Ota

1971年国立鶴岡工業高等専門学校機械工学科卒業。1994年より津山市に移住。1980年より発表をはじめ、採取した種子を和紙に封入し、切手に仕立てた作品「SEED PROJECT」で知られる。

今回は、衆楽園の庭園内に繁茂する樹木や植物にネームプレートを取り付けるプロジェクト「衆楽植物園」、太田の自宅近隣の庭に生える柿とみかんの木の成長を約1年かけて定点観測し映像に収めた「FALL」、園内の鶴と亀の生息数を想像させる「鶴亀算」を展示。また「生命の雫 柿ゼリー」は、太田のアイデアをもとに美作大学の調理師会の学生がレシピを考案し、鑑賞者が柿の種を持ち帰り、柿の木を新たに育むことができる仕掛けが施されている。

会場内パネルより抜粋、一部改変

太田 三郎【鶴亀算】T7-d-1 太田 三郎【鶴亀算】T7-d-2

太田 三郎【鶴亀算】T7-d-3
太田 三郎【鶴亀算】

太田 三郎【生命の雫 柿ゼリー】T7-d-4
太田 三郎【生命の雫 柿ゼリー】

森 夕香【リゾーム】T7-c

森 夕香 Yuka Mori

2015年パリ国立高等美術学校派遣交換留学、2016年京都市立芸術大学大学院修士課程日本画専攻終了。自らの体験や感覚をもとに身体と環境が互いを内包し合い流動的に変化し続ける様を日本画独特の線と顔料で描いている。2019年より植物の写生を始め、植物の身体性からインスピレーションを得た絵画作品やドローイングも制作している。

今回、新作「リゾーム」では衆楽園の池に自生する約1000株の水連に着目、水面に花を浮かべる睡蓮が水面下で根を土壌に固定し、地下茎を横走させ繁殖する生態であることからインスピレーションを得た。画面のほぼ全面を使い、水面下の睡蓮に焦点を当て、人間の身体がその地下茎と繋がっている様を描くことで、人間の身体も視覚では捉えることのできないところで周辺環境と絶えず影響しあう、エコロジカルな存在であることを示唆している。

会場内パネルより抜粋、一部改変

森 夕香【リゾーム】T7-c森 夕香【リゾーム】T7-c

甲田千晴【枯鳥 Kocho-withered-】T7-b

甲田千晴 Chiharu Koda

2005年岡山県大学工芸工業デザイン科卒業後、2008年多治見市陶磁器意匠研究所を終了、陶芸技術を習得。釉薬の研究を通じて、素材が空間に与える影響に興味を持つ。2020年にドイツのカールスルーエ州立美術大学彫刻科を卒業、現在ドイツを中心に活動の場を広げ、素材と空間をテーマに、素材研究をもとにした彫刻、テクノロジーを使用したインスタレーション作品を制作する。

「枯鳥」は、「鳥の頭から植物が生えたような作品」と甲田が言うように、風化し乾燥した土肌から、植物の芽や貝の体を思わせる部分が垂直方向に伸びている。陶素材の特徴的な木肌のようなテクスチャーは、紐づくりという手法で土を積み重ね、歳月や年輪といった時間の流れを表現している。

作品の主な収蔵先にアークティックセラミック美術館(フィンランド)、ドイツ陶器博物館などがある。

会場内パネルより抜粋、一部改変

甲田千晴【枯鳥 Kocho-withered-】T7-b
甲田千晴【枯鳥 Kocho-withered-】T7-b

加藤 萌【微睡みを】T7-a

加藤 萌 Moe Kato

2014年東京藝術大学美術研究家漆芸専攻終了。在学中は螺鈿(らでん)、乾漆(かんしつ)を中心に学ぶ。2014年9月より「漆芸による地域おこし協力隊員」として岡山県新見市に移住。作品制作のかたわらワインの生産に携わる。一貫して動物をモチーフに作品を制作。人に懐く猫や散歩中に遭遇するさまざまな野生動物の様子など、実際に動物と対峙したときの印象を巧みに表現している。

今回展示する「微睡みを」は、寒い日に山の紅葉の下で丸まってまどろんでいる狐を表現した作品である。原型を粘土で制作し石膏型を取り、漆と麻布を重ねて造形する乾漆技法を用いて制作。上半身に新見市の伝統工芸品である神代(こうじろ)和紙を貼って漆で固定し、下半身に透き漆を何層にも重ね、秋の木漏れ日を表現している。

芸術祭公式ページおよび会場内パネルより抜粋、一部改変

加藤 萌【微睡みを】T7-a
加藤 萌【微睡みを】T7-a

津山城と城下スクエア(しろしたすくえあ・津山国際ホテル跡地)

「日本100名城」「日本さくら名所100選」に選ばれている津山市のシンボル。本能寺の変で討死した森蘭丸の弟、森忠政が1616年に築いた平山城。明治の廃城令によって建造物はすべて取り壊されたが、2005年に築城400周年を記念して備中櫓(びっちゅうやぐら)が復元。約45mの高さを誇る石垣とともに人気スポットとなっている。また、県内でも1、2を争う桜の名所として知られ、約1000本の桜が咲き誇る。石垣の上からライトアップされた桜を眺めることもできる。

また、津山城に隣接する旧大名屋敷跡は近代に津山国際ホテルが建設されたが、その跡地に芝を敷き、憩いの空間として「城下スクエア」の名前で活用されている。

開館時間:
4~9月:8:40~19:00、10~3月:8:40~17:00
※最終入園時間は各30分前
※さくらまつり期間中は7:30~22:00
※定休日は12月29~31

津山城跡 そびえる石垣
津山城跡 そびえる石垣

津山城跡 ハートの石「愛の奇石」
津山城跡 ハートの石「愛の奇石」。愛の奇跡と掛かっているとみた。

アシム・ワキフ【竹の鼓動】T8-b

アシム・ワキフ Asim Waqif

インドの都市デリーの都市計画建築学校で学び、手仕事や環境における即興的な作業に関心をもち、アーティストとして活動を始める。早期から竹を使った作品を制作し、伝統的な手法と新たなテクノロジーを融合させた大規模でインタラクティブなインスタレーションを手掛けている。

今回は、地元の竹細工職人・平松幸夫をはじめとする職人と、竹を扱う地元企業、株式会社竹吉と共に、高さ5メートルを超える大型インスタレーション「Take no Kodo[竹の鼓動]」を制作した。

会場となる鶴山公園は、旧津山城の敷地を整備した公園である。複雑に入り組んだ高さ10メートル前後の石垣を背景に、竹の丸太が即興的に組み上げられた構造物が立ち上がる。その中に足を踏み入れると、内部には緻密に編み込まれた竹ひごがダイナミックな流線形をなして装飾され鑑賞者が叩いて音を鳴らすことのできる竹ドラムも置かれており、視覚・触覚・聴覚を刺激する。竹というアジアに共通する自然素材を大胆に繊細に、空間的な構造物に用いるという、アートと建築を横断するその手法は竹資源の利用に新たなアイデアを与えている。

会場内パネルより抜粋、一部改変

アシム・ワキフ【竹の鼓動】T8-b-1アシム・ワキフ【竹の鼓動】T8-b-2アシム・ワキフ【竹の鼓動】

けんぞう

城東むかし町家でアシム・ワキフ氏とジャコモ・ザガネッリ氏のトークイベントをやっていたので参加しました。アシム氏は「私といえば竹を使った作品、という評判が定着しているのもまた少し困りもの」と言っていたよ!

ジャコモ・ザガネッリ 【津山ピンポン広場】 T5-a

ジャコモ・ザガネッリ  Giacomo Zaganelli

地域コミュニティを対象に、芸術や文化プロジェクトを行うアーティスト、キュレーター、および活動家。参加型の展覧会やワークショップにより、地域住民や行政機関などと協議しながら、空き地などの放置されている場所を活性化してきた。

今回ザガネッリはパートナーのシルビア・ビアンティーニと共に、2022年、2023年に県北に約1ヵ月滞在し、津山市の役所や地域コミュニティ、学校などを訪問。住民との対話を通じてプロジェクトを進めた。「Tsuyama Ping Pong Platz[津山]ピンポン広場」は、津山市の文化ゾーンの中心地にあり、駐車場として利用されてきた津山国際ホテル跡地に、パブリックに開かれた屋外卓球場を作り出すプロジェクトである。作家によれば、ドイツでは公共の屋外卓球場は、卓球だけでなく卓球台を利用して飲食を楽しむことも日常的であり、市民のミーティングポイントとなっているという。

作家がデザインし、地元の職人と協働したスチールとコンクリート製の3台の卓球台と、地元の木材を加工したベンチは、和やかなコミュニケーションのためのプラットフォームをつくっている。鶴山公園の石垣や木々の風景と調和し、卓球をかいして来場者と地元住民が交流できる場としてパーマネントに設置される。

会場内パネルより抜粋、一部改変

ジャコモ・ザガネッリ 【津山ピンポン広場】 T5-a
ジャコモ・ザガネッリ 【津山ピンポン広場】 T5-a

けんぞう
ラケットとピンポン玉を借りて実際に遊ぶことが出来ますっ!

つやま自然のふしぎ館

世界各地の動物の実物はく製を中心とした自然史の総合博物館。 館内は約1,500㎡の広さがあり、動物の実物はく製をはじめ、化石、鉱石類、貝類、昆虫類、人体標本(初代館長のもの)類等約20,000点が常設展示されている。
絶滅の恐れのあるキンシコウ、ローランドゴリラ、アムールヒョウ、シベリアトラ、インドライオン、ホッキョクグマなどの希少動物や、シロフクロウ、ナマケモノ、チンパンジー、キリン、ゾウアザラシなどの珍しい動物800点が一同に展示されているのは圧巻。

つやま自然のふしぎ館入口
つやま自然のふしぎ館入口。

つやま自然のふしぎ館 キリン・ゴリラ
つやま自然のふしぎ館 キリンとゴリラ

つやま自然のふしぎ館 ホッキョクグマ・アザラシ・トド・アシカ・ペンギン
つやま自然のふしぎ館 ホッキョクグマ・アザラシ・トド・アシカ・ペンギン

つやま自然のふしぎ館 北米大陸の動物
つやま自然のふしぎ館 北米大陸の動物

けんぞう
建物は、旧「津山基督教図書館高等学校夜間部」の校舎を改築したもの。確かに言われてみればそうだったわ!特殊すぎる環境やった!

ソフィア・クレスポ【危機的な現存】T4-a

ソフィア・クレスポ  Sofia Crespo

バイオテクノロジーへの強い関心を出発点として作品制作を行うアーティスト。2020年に、フェイレアカン・マコーミックと共に「Entangled Others(エンタングルド・アザーズ)スタジオ」を共同設立。テクノロジーが生み出した有機生命体はバイアスのかかった生成物であり、完全に独立した存在ではないという考えのもと、人口知能による画像生成技術などを用いて作品を制作している。

「Critically Extant [危機的な現存]」は、生物に関する100万枚のオープンソースの画像と約1万種の生物に関する情報によって形成されたAIアルゴリズムを用いて、絶滅危惧種のイメージ形成を試みた作品である。

彼女の作品が生み出すイメージの曖昧さは、会場となるつやま自然のふしぎ館が提示している莫大な情報、彼女の作品のソースとなる情報の膨大さをもってしてもなお、自然環境や絶滅危惧種について人々がもっている情報がいかに少ないかを示している。それは、テクノロジーは情報を通して、どのように自然に有益なフィードバックができるかという課題も浮き彫りにしている。

会場内パネルより抜粋、一部改変

ソフィア・クレスポ【危機的な現存】T4-a
ソフィア・クレスポ【危機的な現存】T4-a

「森の芸術祭 晴れの国・岡山」概要について

けんぞう

鋭意作成中…

 

レポートは以上です!
他にもいろんな展示会のグッズを紹介しているので見てください~